情報共有でケイパビリティを強化
「ケイパビリティ(capability)」は、直訳すると「能力・才能・素質・手腕・機能や性能・可能性」となりますが、ビジネスでは、企業成長の原動力となる組織的な強みをケイパビリティと言います。
他社との差別化を図り、持続的に競争に勝つためにも、ケイパビリティを高めることが重要です。
ケイパビリティを高めるには「部門間の交流推進・多様性のあるチームづくり・市場のニーズに合った正確な判断」が必要となります。この3つを実行しグロースしていくためには、どのような取り組みが必要だと思いますか?
答えは「情報共有」です。
組織に情報共有は重要だ!と言われていますが、情報共有を企業に根付かせケイパビリティとして発揮させるためには難しい課題が潜んでいます。
前回のブログでは「ナレッジ共有から始める業務効率化」を説明しましたが、そのナレッジや、社内にある情報を共有していくには、どのようなことに配慮し実行していく必要があるのかについてご紹介していきます。
共有する情報の種類
当たり前ですが、情報共有のためには共有する情報が必要です。
情報共有の目的によって「共有する情報は選別」されますが、情報を構成するデータは、
① 無料・有料問わずオープンソース(WEBや書籍、レポートなど)から入手できるデータ
② 社内にある再利用可能な顧客情報や在庫管理情報、日報などのデータ
③ 新たに作成しなければならないデータ
に大きく分類されます。
さらに、③については
A アナログデータからデジタルデータへ変換するなどでシステムが処理出来るように作り変えることができるデータ
B IoTなどの技術を使って新たに収集するデータ
C 既存データが様々な形(紙・写真・記憶など)で分散し人手を介さなければ作成出来ないデータ
に分類されます。
A デジタル変換するデータと、B 新技術を使って収集するデータについては、技術的に解決できる収集可能なデータですが、個々の社員が持っているナレッジから作成する「人手を介した情報の作成」については、多くの企業が情報共有を推進する上で課題に直面します。
なぜ情報共有は必要なのか?
そもそも、なぜ情報共有は必要なのでしょうか?おさらいしてみましょう。
情報共有とは、各社員が持っているさまざまな情報を蓄積し、共有することで情報を社内で活用し業績向上を目指すことを意味します。
社内で情報共有するメリットは、以下の3点に集約されます。
メリット1:社内の情報格差の均一化と底上げ
他の社員の持つナレッジを社内全体の情報として取り入れられるようになります。要するに、共有した情報は、社内の人間であれば誰でも自分自身のビジネスの武器として使えるようになるということです。
個人のみでは得られない貴重な情報を、自分事として活かすことができれば、個々の営業成績向上が見込まれます。個人の業績の底上げによってチームとしての戦力が上がることで、管理職も評価され企業全体の業績に大きく貢献できます。
「あの商品について、自分は知っているけど、他の人は知らない情報がある」ということ、それは、情報というのは共有されていないと、誰が何を知っているかわからないものです。
相手が知っている情報だったとしても、お互いの確認作業になるので無駄にはなりません。自分とは違った情報の活用の仕方を知ることもあります。
メリット2:削減可能な時間を削減し限られた時間を効率的に活用
企業では、お客様との顧客接点を作ること以外に、情報収集や資料作成、会議などに時間を費やします。例えば、チーム会議や部門会議、上司への報連相など、情報共有を主な目的としたミーティングを頻繁に行っていないでしょうか?
また、情報を知ってそうな社員を探索する・メールする・電話をする・会話するという双方が費やす見えない時間コストを消費していないでしょうか?
情報を共有することでも時間コストの削減が見込めます。そうすると、お互いの時間を奪うことがなくなるため、部門全体の生産性が向上します。
メリット3:様々な視点が入り情報の活用方法の多角化が可能
組織構成にもよりますが、例えば、営業組織は専門分野のお客様や商材を扱っている場合、その顧客や商材についてのナレッジが蓄積されています。従来の営業では顧客や商材を深く知ることで突破出来ていた営業活動ですが、現在は、モノ余りの時代…顧客は常に新しい提案を求めます。
簡単な例え話ですが、組織内にA商材専門・B商材専門・C商材専門部門があったとします。それぞれの部門では、旬や産地などを熟知しその時々で専門商材を営業します。しかし、それだけでは売上が達成できません。ある休憩中に、A部門の社員が、B部門に売上の悩みを話したところ、B部門でも同様の課題を抱えていることがわかりました。
A+Bで何か新しい提案が出来ないかを考えます。お互い専門部門のため旬の産地の素材を使った加工品を提案することなりました。さらに、C部門を巻き込むことで、さらに多様な提案が可能であることがわかりました。
このように、専門部門が持ち寄った情報を一箇所に蓄積し取り出しやすい環境を構築することで他部門の視点が加わり、新たな発想で商材を開発するなど、情報共有による業績向上に向けた効果が発揮できると考えられます。
このような場合の情報共有の方法は、従来の会議などの方法や「情報を溜めることの出来る器」と「調理台」を準備するなど、様々な方法があります。
組織間の連携が行える「情報を溜めることの出来る器」や「調理台」などの環境を整えることで、社員が部門の壁を超えプロジェクトを生み出す力を蓄えられるなど、社員の主体性を成長させ、行動に移るスピードが早くなるため、組織マネジメント上の成長向上が期待できるでしょう。このように情報共有は組織力強化や業績向上へも期待されます。
情報共有が不足することで起こる3つの問題点
では、情報共有が不足することによりどのような問題点が起こるのでしょうか。起こりやすい3つ問題点を解説します。
問題点1:知識が属人化してしまう
情報を共有しなければ、社員の持つ知識が属人化されます。つまり、一部の社員しか知らない情報を多く抱えることになり、その社員が不在の場合は業務が止まってしまう、異動したら引き継がれない、といった問題が起こります。
さらに、有益な情報を持つ社員が退職することで、時間をかけて収集した情報が消えてしまうことも大きな問題です。特定の社員の持つ情報が他の社員に共有されないのは、企業としての損失が大きいと言わざるを得ません。
営業の場合、ノウハウを持つ営業パーソンは成績が上がり、そうでない人は成績が上がらない、といった差が生じます。これは会社にとっては好ましくない状態です。
このように、知識が属人化していると、優れた営業パーソンが退職や異動をすると営業部門の業績が下がる恐れがあります。そうした事態を防ぐために、日頃から情報やノウハウの共有をし、属人化を防ぐようにしましょう。
問題点2:生産性が低下してしまう
例えば、別々の顧客が同じような悩みを抱えているケースがあるとします。この場合、営業組織で情報共有がなされていれば、同じ解決策を提案するなどで対応できます。しかし、情報共有できていないと、各々で対応することとなり、同じ業務が2重に発生してしまいます。
このように、担当する社員が各々で解決策を調べ、検討し、提案することは、極めて非効率的であり、組織全体の生産性の低下を招いてしまうことにつながります。こうした業務の無駄は、情報共有をしていれば防げることです。
問題点3:部門間連携、及びチームワークの欠如
社内において情報共有ができていないと、課内社員同士の認識のズレが生じ、部門間の連携も取れなくなります。また情報共有の手段を口頭伝達に頼っていると、「聞いた・聞いていない」「言った・言われていない」などのビジネス上のあるあるが起こる可能性は非常に高くなります。
このような事態は、適切な情報共有がなされていれば防げることです。情報は共有してこそ効力を発揮します。
情報共有の壁
企業は、各個人が保有している情報やナレッジを重要な経営資源として捉えています。「情報共有は必要だ!」という強いリーダーシップのもと、情報共有の意味を社員が理解し、日々の業務の中で得られたデータを入力し蓄積していける企業は稀ではないでしょうか。
新たな取り組みに対して社内の否定派は少なからず発生します。特に社員にデータ入力作業をお願いする場合は「日々の業務に追われデータを作るなんて時間は無い!」「働き方改革で残業時間を削減しろというが、新たな作業を追加するとは何事か!」「データ入力は誰かに任せてよ!」など、データ入力に消極的な社員の意見が情報共有を推進する部門を悩ませているのではないでしょうか。
情報入力の壁を超える3つの施策
共有を推進する立場として「社員の情報入力の壁」を突破する必要があります。社内の情報共有基盤を支える社員のデータ入力作業を促進するために抑えておくポイントは3つあると考えています。
管理職の理解を得る
組織としての情報共有への期待は、各社員が保有するナレッジを共有し効率的に業務を遂行し、業績向上に結びつけることと考えます。
情報共有の推進は、情報を利用する社員の主体性や自主性が重要ですが、共有を推進する立場としては、管理職が情報共有の重要性を理解し部門を教育指導していくことへの働きかけが重要であると考えます。
チーム会議や部門会議、経営会議など大小様々な会議体が運営されていると思いますが、情報共有を推進することで、社員の時間拘束を削減できる。本来の業務へ専念してもらうなど情報共有の推進部門のみならず、組織をマネジメントする管理職を巻き込んだ推進体制を構築していくことが重要です。
管理職への提案には、定量・定性的な資料にて説明することが重要です。
例えば、働き方改革やテレワークの取り組みで業務フローを分析し、どこに時間を使っているのか?その業務を効率化するには、どうしたら良くなるのか?など社内で議論されていれば、その分析結果を利用し、業務フローを分析することをお勧めします。
少なからず社内では、One to Oneの情報交換は行っているはずです。業務フローから情報共有が有効的な業務を抽出し、個人による情報収集時間と共有化された情報を利用できる時間の差を導き、その時間効果を組織内に置き換えた「データに基づく見えないコストの削減」を指導していくことも効果的です。
まだ業務フローの分析を行っていない場合は、部門の一人を代表ケースとして、業務を洗い出し業務フローを整理することでも仮説を建てることができます。情報共有への推進をきっかけにチームワークによる効率的な業務の進め方を組織内で議論してみてはいかがでしょうか。
また、強硬なやり方かも知れませんが、情報入力のノルマ化や情報共有貢献度指標としてKPI化し、評価項目とすることの出来る権限も管理職です。本件も念頭に管理職の理解を得ることが重要です。
入力に対するインセンティブ
すべての社員が「Give to Giveの精神」を持ち合わせていないことも踏まえ、インセンティブについても考慮します。
インセンティブは、対価のみではなく時間にも適応できます。情報共有のための作業は単に業務を増やしているだけではなく「増える業務」と「減る業務」のバランスを示すことが重要です。
例えば、同僚を捕まえて「こんな情報持っていない?」「ちょっと教えて欲しいのだけど」など、日常的に会話されていると思います。この会話が情報共有という認識ではなく「コミュニケーションや情報交換」という感覚で「情報共有」として認識していない可能性もあります。
実は、相手を捕まえる相談に乗ってもらうということは、自分のために相手の時間を分け与えて貰っているということになります。すなわち、相手は、本来やらなければいけない業務のための時間を削って自分に与えていることになります。(事前にアポを取る場合も、予定を確認するなどの時間も見えない時間コストとして発生しています。)
情報交換に費やす時間は、たとえ一日3分であっても「3分/日×5日/週×20日/月×12ヶ月=3,600分/年=7.5日/年(8時間労働換算)」となります。これを複数人と情報交換を行っているとすると×人数の時間コストがかかります。
社内に情報共有の環境ができていれば、相手を拘束せず、時間に囚われず自身や相手の時間コストを削減することができます。
日常業務の “ ついで処理 ” を推進
社員が、日常の業務で繰り返し行っている業務は何かを考えてみます。営業職では、営業日報作成、顧客管理、提案資料作成、経費精算などは、マストな作業ではないでしょうか?
日報作成時には、その日の訪問先や訪問先への提案や商談内容も報告してもらっていると思います。その報告内容に社員に共有してもらう有効な内容は無いでしょうか?
日報用に作成した報告内容を社内共有へ転用するなど、日常業務と直結させて考えてみることで、書くことが苦手な社員に対しては “ ついで ” や “ 作業は一回にする ” という考えを指導することで情報共有への負荷や負担が減ると思います。
おわりに
今回は、情報共有を推進する担当が抱える課題について、解決の糸口を提案させていただきました。
推進部門は、様々なきっかけで社内の情報共有をスタートしていると思いますが、社内情報共有を文化として根付かせるには「社員一人ひとりが、共有された情報を使って業務を改善し、メリットを感じてもらうこと」であることと思います。
そのためには、共有による時間短縮効果・社員の提案幅の拡大・新規顧客の開拓・売上げアップなどの事例を収集し、管理職や社員へ展開するなども効果的です。
ぜひあなたの会社でも情報共有の推進に取り組んでみてください。
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ケイパビリティを強化するためには、情報共有への取り組みが不可欠です。何から始めるべきか?情報の蓄積環境も無いなどの場合でも、オールインワンでサービスを提供しています。
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