【着実に実現できる】DX推進ロードマップの描き方
DX推進の近道は「踏むべきステップを着実に歩むこと」
はじめに
最近よく耳にするデジタルトランスフォーメーション(DX)。
「生活がより便利になること」となんとなくわかるものの、これを自社のビジネスに置き換えて考えると、実際問題、何をどうしたらいいのか、と頭を抱える経営層やDX推進担当者は多いと思います。
旗振り役である経営層にとって、ビジネスをどう変革していくかを描くことは簡単ではないでしょう。
DX実現のためには、ビジョンや戦略を言葉にし、変革をプロジェクトとして描き、プロセスや組織改革へと落とし込んでいく必要があります。
ですが、DXがもたらす変革とは、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような破壊的変革のこと。当然、ゼロベースで考えても容易く浮かんでくる訳もありません。たとえ描けたとしても、現場の社員にとっては日常業務から大きく乖離するスケールの話に聞こえてしまい、自分事として認識しづらくなる…ということは往々にしてあります。
当社は食品業界に特化したDX推進支援サービスを提供していますが、食品業界にとってのDX推進の近道とは「踏むべきステップを着実に歩むこと」と考えています。
そこで本記事では、食品業界に焦点を当て、DXに至るまでの踏むべきステップをわかりやすく解説し、自社で着手していく際のDX推進ロードマップの描き方についてご紹介します。
DXとはなにか?
まず、DXとは結局のところ、何がどうなることなのか、おさらいしましょう。
DXとは、進化したデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をあらゆる面でより良いものへ変革させること。
例えば、高速インターネットやクラウドサービス、AIやITによって、ビジネスや生活の質を飛躍的に高めていくことがその例です。
とはいえ、まだ企業にとってのDXがどのようなものであるか、イメージがつきにくいでしょう。
企業にとってのDXとは、単純なIT化やAIといったデジタル技術の活用を指すのではなく、デジタル技術を使って革新的なビジネスモデルを実現することを指します。
そして、革新的なビジネスモデルとは、製品やサービス形態、その提供手段や消費の仕方に変化を及ぼし、そこで働く従業員の働き方をも変化させることを意味します。
企業がDXに取り組むべき理由とは?
DXが必要とされる最大の理由は、ビジネス環境の激しい変化にあります。
近年、あらゆる業界でデジタル技術を駆使し革新的なビジネスモデルを展開する新規参入企業が登場しています。
絶対王者であった業界のリーダー企業であっても、その座から引きずり降ろされるような、まさに「デジタルディスラプション」と呼ばれる事例も生まれています。
例えば、UberやAirbnbもデジタルディスラプションを起こした企業です。スマートフォンアプリやWebサイトを通し、シェアリングというビジネスモデルを実現しました。自社では車や建物を一切所有せず、タクシー事業や宿泊事業へ参入したことは、市場へ大きなインパクトをもたらしました。また、所有物をシェアするという新しい概念を人々へ与えた事例です。
このように、人々の既存の価値観を覆すような製品・サービスが次々と誕生し、ビジネス環境は大きく変わりつつあります。
その中で既存企業が勝ち残るためには、DX推進が不可欠だとされているのです。
そう、DXの本質はここにあります。
市場で自社が生き残るために、継続的な収益を得るビジネスモデル(仕組み)を作り上げることこそ、DXの本質なのです。
デジタル化もDXと言えるのか?
「オンライン会議システムを導入し、テレワーク環境を整備」
「ビジネスチャットツールで、社内情報共有を促進」
…これらはDXといえるのでしょうか。
残念ながら、これらはまだデジタル化の域にあります。
では、DXとデジタル化の違いはどこにあるのか。それはビジネスモデルを変革させたかどうかという到達領域の違いにあります。
DXとはデジタルを活用してビジネスモデルを変革すること。
一方、デジタル化とは、デジタルを活用して業務効率化を図ること。デジタル化の主目的は業務効率化であるため、既存のビジネスモデルの変革までには至らないのです。
では、DXとデジタル化は別物かというと、そうではありません。実はDX実現の過程に、デジタル化が存在するのです。
DX実現までに必要な2つの「デジタル化」
DX実現までの過程に存在するデジタル化。
実は2種類あり、デジタイゼーションとデジタライゼーションと呼ばれています。
【デジタイゼーション】
デジタイゼーションとは、既存プロセスの部分的なデジタル化。
例えば、書類をスキャンし、データ保管することや単純作業の自動化、業務効率化ツール導入もデジタイゼーションにあたります。
つまり、最も基本的なデジタル化であり、業務プロセスの効率化や無駄の削減を意識したものです。
【デジタライゼーション】
デジタライゼーションは既存プロセス全体のデジタル化です。
テクノロジーやデータを活用し、プロセス全体を改善したり、既存のビジネスモデルに変革を起こし、新たな価値を創造することを指します。
2種類のデジタル化には、局所的か全域的かという違いがありますが、これらのデジタル化を経て、結果として社会的な影響をもたらす境地がDXなのです。 DXは、企業におけるデジタライゼーションがなければ存在し得ませんし、デジタライゼーションはその前段階であるデジタイゼーションが果たされていなければなりません。
つまり、企業にとってDX実現するためにはまずデジタイゼーションから始めることが第一歩なのです。
着実に実現できるDX推進ロードマップの描き方
DXを社内で推進していく際、他社より優位な最新技術かどうかに目が行きがちですが、
そこに固執せず、今手に入るものを使って些細な変化を着実に重ねていくことが非常に重要です。
そして、このような些細な変化を大きな変革へ繋げるためにも、ロードマップに2つのデジタル化を落とし込むことをお勧めします。
【第1フェーズ:デジタイゼーション領域を定める】
まず、既存プロセスの部分的なデジタル化から着手します。
ここでの目的は、これまで以上の生産性向上を実現すること。そして、生産性向上により生み出された時間で、高付加価値業務に専念することです。
デジタル化する対象を選定する際には、現場の業務単位で考え、どの工程をデジタル化させれば最も生産性が向上するか、という視点で見直すことが足掛かりとなります。
共有ドライブ、ビジネスチャット、Web会議システムなど、業務効率化ツールの導入も全社横断的にできる打ち手です。
また、特定の部門における既存プロセスへ目を向けるのも良いでしょう。
例えば、市場調査で入手した情報はどのように保管していますか。営業部門とマーケティング部門はどのように情報共有していますか。
本来、市場調査で得た情報は会社のナレッジとして共有・分析され、自社独自の営業戦略検討へと活用されるべきものです。
この一連のプロセスにおいて、情報の集約・共有工程をデジタル化することで、本来専念すべき分析や営業戦略検討のために時間と労力を有効活用できるようになるのです。
【第2フェーズ:デジタライゼーション領域を定める】
既存プロセスの部分的なデジタル化が定着したら、次は既存プロセス全体のデジタル化に着手できるタイミングです。
ここでの目的は、既存事業における新たな顧客価値を創造することです。
例えば、所有からシェアリング、ダウンロードからストリーミング、物販からサブスクリプションなどは、
既存プロセス全体のデジタル化により購入や所有の在り方を変革させ、今までにない顧客価値を生み出した事例です。
食品業界にとって商材は食品であり有形商材ですが、食品という商材を通して提供されている価値は「食べる」ということであり、「満たす」ということであり、「暮らしを彩ること」とも言えるでしょう。
食品を通して提供されるこれらの価値を「サービス」として捉えてみてください。すると、「サービス」としての価値提供プロセスが見えてきます。
このプロセス全体にデジタル化の強みを添えることで、新たな顧客価値が創出されるのです。
こうしたデジタライゼーションに取り組む過程で、実は次の第3フェーズに必要な視点を獲得していくのです。
それは、自分たちの商材そのものを中心に見るのではなく、商材が世の中へ与えている価値を中心にビジネスを見つめるという視点。
この視点の変化こそが、DXに向けた着想の種に繋がります。
【第3フェーズ:DX領域を定める】
デジタイゼーション、デジタライゼーションを経て養われた視点で、新しいビジネスを創出すること、これが第3フェーズで成すべきことです。
新しいビジネスは何も1社で成し遂げなくても良いのです。
むしろ、人々の価値観を覆し、市場への大きなインパクトを与えるものこそ、外部パートナーとの連携が不可欠です。
外部連携を図る際に鍵となるのが、自社が持つ商材・リソースの親和性です。
「食」は人の暮らしに欠かせないものだからこそ、食品業界は様々な外部パートナーと親和性が高く、エコシステム構築をリードできる業界と言えるでしょう。
社会変革を起こす新ビジネスを考える際、地域社会やコミュニティの構築、ヘルスケア、ライフスタイル変容など、あらゆるテーマとの親和性が高いと言えます。
この「食」という特性を最大限利用できること、それこそ食品業界の強みです。
まとめ
DX実現のためには、デジタイゼーションやデジタライゼーションという踏むべきステップがあります。
自社にとっての1段目の階段を最適な高さに設定し、着実に歩みを進めていくことが実はDXへの近道なのです。
そして、これらの階段を上る過程において、自社のビジネスやリソースを見つめ直す視点を獲得することで、革新的ビジネスモデルを創出するための企業力を育んでいくのです。
ぜひ、DX実現の過程を大事にしたロードマップを描いてみてください。
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